曲突徙薪(きょくとつししん)第11号

中小事業者のデフォルト状況 〜2023年10月までの最新データ〜

企業倒産の状況

 東京商工リサーチ(TSR)は、11月9日に10月の倒産件数を公表しています。10月単月での倒産件数は793件(前年同月比+33%)、直近12か月の累計は8,260件(同+32%)となりました。前月比での増加は2022年4月から19か月連続で、コロナ禍前の平均的なレベルである年8,000件を超えて増え続けています。また10月の倒産企業の負債総額は3,080億円で、9月としては13年ぶりの高水準となりました。先月のパナソニック液晶ディスプレイ(株)に続いて、今月は大手パチンコホールの(株)ガイア(グループ7社合計約1,600億円、民事再生法)の破綻が負債総額を大きく押し上げました。

倒産件数の推移(2018年10月~2023年10月)
(出所:東京商工リサーチWebサイトより筆者作成)

 単月の倒産件数793件は2019年10月の780件を上回っており、また前年同月比での伸び率も+30%を超えています。今後は、コロナ禍当時に抑えられていた倒産がどこまで表面化して倒産件数を押し上げるかに注目です。

信用保証協会による代位弁済の状況

 全国信用保証協会連合会は9月の保証承諾と代位弁済にかかる数値を公表しています。9月の新規保証承諾金額は9,512億円(前年同月比+17%)となりました。一方で8月末の保証残高は38兆2千億円(同▲7%)と減少ペースを強めています。ゼロゼロ融資の返済が進む一方で、一部の信用力に劣る事業者による協会保証への需要が増えている様子がうかがえます。月次の保証承諾額はコロナ禍前よりも平均的に高い水準にあり、コロナ禍は終息しても保証協会による資金繰り支援は平時に戻ったわけではありません。

代位弁済率(推定値)と新規保証承諾額(2018年9月〜2023年9月)
(出所:全国信用保証協会連合会Webサイトより筆者作成)

 9月の代位弁済件数は3,894件(同+56%)となり、9月としては2014年以来の高水準となりました。また、保証承諾件数と代位弁済件数から推定した8月の代位弁済率は1.01%となり、25か月連続で上昇しました。こちらはコロナ禍前との比較でまだ0.2%ポイントほど低い水準にあります。保証件数、代位弁済率ともに、直近のトレンドに沿った動きであり、大きな傾向の変化は見られません。引き続き代弁率の上昇は見込まれますが、コロナ禍前から経営状況の厳しかった中小・零細企業における動きであり、銀行の貸出先に与える影響は限定的と見られます。

米国の企業倒産の状況

 米国ではABI(American Bankruptcy Institute)が、調査会社Epiq Bankruptcy社の調査結果をもとに、10月の倒産件数を速報しています。日本の民事再生法に相当する破産法11条(Chapter11)の適用件数は631件(前年同月比+106%)と急増しました。直近12か月間の累積は5,844件で、こちらは16か月連続の増加です。

米国Chapter11申請件数(2018年10月~2023年10月、速報値)
(出所:American Bankruptcy Institute Webサイトより筆者作成)

 米国の倒産件数は増加を続けていますが、今月は前年比での伸び率が100%を上回るなど、足元で増加ペースが強まっています。日本に比べて遥かに急ピッチの金融引き締めをおこなった影響が現れている可能性もあり、今後はコロナ禍前の水準をさらに上回っていくのか注目されます。