曲突徙薪(きょくとつししん)第10号
DIに加えて、景気ウォッチャー調査のもう一つの見どころは、調査員の生のコメントです。9月の調査結果の中から一部を抜粋して紹介します。
物価高騰が収まらないなか、おにぎりや弁当などの主食商品について、客が価格を気にしながら購入している。また、キャンペーン商品や値引き商品に対する客の反応が以前よりも良くなっていることも、客が価格に対して敏感に反応している現れである。客単価も下がりつつある。 (北海道、コンビニ) |
朝から夕方までの仕事のつながりは良い。夜は飲み屋の客入りが良いようで、店から のオーダーが増えている。平日深夜は利用が少ないが、金曜日、土曜日は終電後までタクシー乗り場に客が並んでいる。 (南関東、タクシー運転手) |
既存の客だけでなく、新規取引先からの依頼も目立ち、企業からの注文が増えている。 また、最低賃金の改定を踏まえ、派遣料金も若干上げて見積りを出しているが、応じて くれる企業がほとんどである。 (九州、人材派遣会社) |
物価高による日用品の値上げラッシュが、新聞やテレビで大きく取り上げられていますが、調査員のコメントにも値上げの影響に触れるものが多く見られます。それらに共通するのは、消費者の目が「セール品」や「見切り品」に集まるというものです。日用品の多くは必需品でもあるので、値上げが直接的に消費量を減らすものとは限りません。また、タクシー運転手のコメントにもあるように、飲食店の復調はコロナ禍前との比較でなお途上にあるものの、トレンドは引き続き上向いているようです。そして、これも新聞やテレビで目にしない日はない「人手不足」については、ここで取り上げた調査員のコメントに限らず、都会よりも地方でより顕著な様子がうかがえます。
このほか、今月のコメントだけではわかりにくいのですが、過去数か月間のコメントを追っていくと、徐々に「インバウンド需要」に言及する調査員が減っている傾向が顕著に見て取れます。これは観光客が減ったのではなく、むしろ「平時の水準に戻った」ものと考えられます。
景気ウォッチャー調査の結果からは、消費行動、インバウンド需要のいずれもコロナ禍以前の「平時」の水準に戻っており、足元の方向感も決して悪くないという国内景気の現状が見えてきます。円安、物価高に加えて、ウクライナ戦争、そして直近ではにわかに緊迫する中東情勢など、不安材料は数え切れませんが、あまり悲観しすぎることなく状況を見ていきたいところです。
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