曲突徙薪(きょくとつししん)第9号
中小事業者のデフォルト状況 〜2023年8月までの最新データ〜
企業倒産の状況
東京商工リサーチ(TSR)は、9月8日に8月の倒産件数を公表しています。8月単月での倒産件数は760件(前年同月比+55%)、直近12か月の累計は7,942件(同+30%)となりました。前月比での増加は2022年4月から17か月連続で、コロナ禍前の年8,000件超の水準にほぼ並びました。また、8月の倒産企業の負債総額は1,083億円で、6か月連続で1,000億円を超えています。こちらもコロナ禍前の水準に戻っています。今月は負債総額100億円以上の企業の倒産はありませんが、それ以下の規模の企業では負債総額が増加傾向にあるようです。
発表直後には、倒産が増えていることを懸念する報道が相次ぎましたが、すでに示した通り、倒産件数は平時の水準に戻っただけで、むしろ、コロナ禍で経済が停滞していたにも関わらず、昨年までの倒産が異常に少なかったことに留意すべきでしょう。当面は、コロナ禍の下での行き過ぎた資金繰り支援策によって延命された企業からの倒産が増えることが予想されます。谷深ければ山高く、10,000件/年くらいまでの増加であれば、特にサプライズとはいえないのではないでしょうか。
信用保証協会による代位弁済の状況
全国信用保証協会連合会は、7月の保証承諾と代位弁済にかかる数値を公表しています。7月の新規保証承諾金額は8,305億円(前年同月比+34%)となりました。一方で7月末の保証残高は38兆9千億円(同▲6%)と大きく減っています。ゼロゼロ融資の返済開始が本格化する中、一部の信用力に劣る事業者による、信用保証協会への需要が増えている様子がうかがえます。
7月の代位弁済件数は3,746件(同+57%)となり、7月としては2015年以来の高水準となりました。代位弁済件数は保証債権の数に依存するため、事業者数に依存する倒産件数との直接的な比較はできませんが、代位弁済の動向を見る限り、返済が滞る事業者の数はコロナ禍前をすでに上回っている可能性があります。また、保証承諾件数と代位弁済件数から推定した7月の代位弁済率は0.95%となり、23か月連続で上昇しました。こちらはコロナ禍前との比較で、まだ0.2%ポイントほど低い水準にあります。
米国の企業倒産の状況
米国ではABI(American Bankruptcy Institute)が、調査会社Epiq Bankruptcy社の調査結果をもとに、8月の倒産件数を速報しています。日本の民事再生法に相当する破産法11条(Chapter11)の適用件数は634件(前年同月比+54%)となりました。直近12か月間の累積は5,381件で、こちらは16か月連続の増加です。
米国の倒産件数は、コロナ禍前の水準とほぼ同じところまで戻っています。当面は、平常時の5,000〜6,000件/年という倒産件数のレンジに収まるのか、さらに倒産件数が拡大するのかが注目されます。米国の場合、上記の図表を見ても明らかなように、コロナ禍直後に大きく倒産件数の増えた時期があり、政策支援による倒産の先送りの影響は日本に比べると小さいものと考えられます。急激な景気減速のようなリスクシナリオを除くと、倒産件数が6,000件/年を大きく上回るようなオーバーシュートの可能性は限られるのではないでしょうか。
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