曲突徙薪(きょくとつししん)第9号

金融機関における生成AIの活用

 先月まで2回にわたって、生成AIの仕組みや学習の方法について技術的な理解を試みました。今月は、金融機関において生成AIが、今後どのような業務に活用されるのか、技術的な背景や生成AIの特徴を踏まえて考えてみます。

 生成AIは、普通の人間には真似ができないような難しいタスクを瞬時にこなすことができる一方で、結果の正確性・完全性は必ずしも保証されていないという、これまでのコンピューターシステムの常識とはやや異なる特徴を持っています。また、難しいタスクをこなすための高度なアルゴリズムを実現するには、汎用的なデータによる学習に加えて、開発者の意図に沿った回答を生成するためのファインチューニングが必要になります。こうした生成AIの特徴や学習の手順を前提とすれば、生成AIの実務での活用は、学習の難易度に応じて、次のような順序で進むものと考えられます。次ページ以降で、それぞれの内容について概要を紹介します。

  1. (汎用データによる学習だけで対応可能な)一般的なタスク
  2. 専門知識や組織固有の知識といった一定の専門性が必要なタスク
  3. 専門性に加えて結果の正確性・完全性が求められるタスク
生成AIの活用業務分野
(出所:筆者作成)