曲突徙薪(きょくとつししん)第8号
中小事業者のデフォルト状況 〜2023年7月までの最新データ〜
企業倒産の状況
東京商工リサーチ(TSR)は、8月8日に7月の倒産件数を公表しています。7月単月での倒産件数は770件(前年同月比+41%)、直近12か月の累計は7,674件(同+27%)となりました。前の月に比べて増えたのは2022年4月から16か月連続で、コロナ禍前の年8,000件超の水準との差は300件ほどにまで縮小しました。倒産企業の負債総額は1,621億円で、5か月連続で1,000億円の大台を超えました。今月は負債総額100億円以上の企業の倒産が3件(先月は1件)あったほか、飲食店グループでまとまった規模の破綻が見られたことから、これら大口倒産によって負債総額が押し上げられた可能性があります。
現在のペースで倒産が増えた場合、早ければ今月8月にもコロナ禍前の水準である年間8,000件台に到達する可能性が出てきました。景気ウォッチャー調査の結果などを見る限り、国内の景況感は現状、先行きともに決して悪くないことと合わせて考えると、直近で増えている倒産の多くは、景気拡大の波に乗り切れない、限界的な業況にあった企業による破綻が占めているように見えます。
信用保証協会による代位弁済の状況
全国信用保証協会連合会は、6月の保証承諾と代位弁済にかかる数値を公表しています。6月の新規保証承諾金額は9,127億円(前年同月比+37%)となりました。コロナ禍以前との比較では、東日本大震災直後の2011年6月以来の水準であり、足元では、ゼロゼロ融資の借り換えも含めて、伴走支援型特別保証をはじめとする制度融資が活発に利用されています。倒産件数が増加していることからもわかるように、国内の中小・零細企業のなかには、コロナ禍後のリオープンの流れに乗るどころか、コロナ禍の後始末から苦しい資金繰りを強いられている事業者も数多く存在しており、当面はこれらの経営破綻や、条件緩和に伴う代位弁済が増えるものと思われます。
保証承諾件数と代位弁済件数から推定した6月の代位弁済率は0.91%となり、22か月連続で上昇しています。なお銀行における取引先のデフォルト状況を示す日本リスク・データ・バンクのRDB企業デフォルト率は、5月実績にはなりますが1.2%を上回っており、すでにコロナ禍前の水準を超えています。代位弁済率も、当面はこれと同様の上昇トレンドが続くものと思われます。
米国の企業倒産の状況
米国ではABI(American Bankruptcy Institute)が、調査会社Epiq Bankruptcy社の調査結果をもとに、7月の倒産件数を速報しています。日本の民事再生法に相当する破産法11条(Chapter11)の適用件数は362件(前年同月比+71%)となりました。直近12か月間の累積は5,213件で、こちらは15か月連続の増加です。
コロナ禍の前の水準を見ると、平常時の倒産件数は5,000〜6,000件の間を横ばいで推移することが多いようで、今後はこのレンジにとどまるのか、そこを大きく超えることになるのかが注目されます。春先には地方銀行の経営破綻が相次いだこともあって、銀行による融資姿勢が厳しくなることから倒産も大きく増えると予想するメディアも多く見られたのですが、足元の動きは上記のレンジ内にあり、想定を大きく超えるような信用収縮は見られていません。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません