曲突徙薪(きょくとつししん)第7号

金融政策決定会合 ~清滝教授の声は届くか?~

 先月取り上げた「清滝教授の一石」の中で、清滝教授は日本の適正なインフレ率の目安として、1〜2%程度という数値を具体的に挙げられていました。これに対して、6月30日に発表された日本のCPI速報値は、総合指数が前年比+3.1%、生鮮食品とエネルギーを除く総合(コアコア)が同+3.8%となり、もはや「物価の動向を見極める」などと悠長なことを言っていられるタイミングが過ぎてしまったようにも見えます。

 ひところは9%を超える厳しいインフレに見舞われた米国では、昨年からの急激な金融引き締めの効果もあってか、6月のCPIは総合で前年比+3.0%となり、ついに日本の水準を下回るところまできました。日本ではマイナス金利が続けられていますが、足元の米国の短期金利は5〜5.25%の間にあります。

 世界中の金融当局がインフレとの戦いで金融引き締めを進める中で、日本だけがなおマイナス金利という「無責任な」金融政策を続けています。これが大幅な円安を通じて輸入物価を押し上げ、さらにインフレが進むという悪循環を招いています。また教授のお言葉を借りると、長期的には日本経済の成長力までも奪っています。

 今月27日と28日の日銀金融政策決定会合では、異次元緩和の見直しが大いに議論されることでしょう。果たして教授の声は届くのでしょうか?

 次回「曲突徙薪」は、8月15日(火)の更新予定です。 

曲突徙薪(きょくとつししん) 第7号
発行日:2023年7月15日
発行者:尾藤 剛 (リボーン合同会社 代表社員)

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