曲突徙薪(きょくとつししん)第6号
中小事業者のデフォルト状況(〜2023年5月)
東京商工リサーチ(TSR)は、6月8日に5月の倒産件数を公表しました。これによると5月単月での倒産件数は706件(前年同月比+34.7%)、直近12か月の累計は7,186件となりました。単月での増加は2022年4月から14か月連続で、コロナ禍前の年8,000件超の水準に向かって倒産件数は増勢を強めています。倒産企業の負債総額は2,787億円で、3か月連続で1,000億円の大台を超えました。今月は「らくらくホン」の製造元として知られるFCNT社が民事再生法を申請したことで、負債総額は大きく膨らんでいます。負債総額100億円以上の企業の倒産は3件(昨年3月は3件)ですが、いずれもFCNT社の関連企業であり、大型破綻の裾野が広がっているわけではありません。倒産の大半が信用力に劣る中小・零細企業によるものという最近のトレンドは、依然として変わりないようです。
現在のペースで倒産が増加すると、今年の9月から10月あたりには、コロナ禍前の水準である年間8,000件台に到達します。そこを平常時の水準として、さらに件数が増えるかどうかが、国内事業会社の経営環境の良し悪しを判断する一つの目安になるものと思います。
全国信用保証協会連合会は、3月と4月の保証承諾と代位弁済にかかる数値を公表しています。3月の新規保証承諾金額は1兆2,026億円(前年同月比+38.3%)、同じく4月は6,453億円(同+42.6%)となりました。多くの企業が決算期末を迎える3月は、コロナ禍以前との比較では2012年3月以来の高水準となりました。4月も、コロナ禍以前との比較では2011年以来の6000億円台に乗せており、足元では中小零細企業向けの協保付き融資が活発に利用されているようです。
保証承諾件数と代位弁済件数から推定した代位弁済率は、3月が0.81%、4月が0.85%といずれも上昇しています。3月の代位弁済件数は3,702件となり、3月としては2017年以来の高水準です。代位弁済率の推移は、倒産件数とほぼ同じような曲線を描いていますが、こちらがコロナ禍前の1.2%水準まで戻るのは、今のペースでも早くて年末あたりになりそうです。
米国ではABI(American Bankruptcy Institute)が、調査会社Epiq Bankruptcy社の調査結果をもとに、5月の倒産件数を速報しています。日本の民事再生法に相当する破産法11条(Chapter11)の適用件数は680件(前年同月比+104.8%)となりました。直近12か月間の累積は4,717件で、こちらは13か月連続の増加です。米国でも倒産件数は、コロナ禍前の平均である約5,800件を大きく下回っていますが、ここへきて前年比倍増のペースで増えています。こちらも日本と同様に、秋口にはコロナ禍前の水準にまで戻りそうですが、米国は急ピッチでの金融引き締めがすでに進んだ後でもあり、むしろコロナ禍前の水準を超えてどこまで上昇するのかに注目したいところです。
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