曲突徙薪(きょくとつししん)第6号

2023年6月15日発行

 証券取引等監視委員会は6月9日、千葉銀行と子会社のちばぎん証券、提携先の武蔵野銀行にて、仕組み債の販売に不適切な取り扱いがあったものとして、行政処分を行うよう金融庁に勧告しました。

 仕組み債については、以前から顧客の苦情の多いことが問題視されており、昨年12月には金融庁がすべての地銀に対して、販売実態調査に乗り出していました。昨年の内外市場での株価大幅下落によって、仕組み債の多くを占めるEB(他社株転換債)を購入した個人投資家が多額の損失をこうむったことで、その商品性の問題があらためてクローズアップされました。今では取り扱いをやめた銀行、証券会社も少なくありません。

 ここで仕組み債の商品性について細かくは説明しませんが、少なくとも私から見るとEBは、顧客側に限定的なリターンと大きなリスクを残す一方で、販売側だけが多額の手数料を手にする、売手と買手の利害の非対称性が著しく大きい金融商品です。リターンに上ブレ余地のある株式投資やオプション投資に比べると、価格の下押しリスクを抱えながらリターンも限られる「欠陥商品」と言い切って良いでしょう。その証拠に、機関投資家は一切手を出しませんし、証券営業担当の多くは自分の身内には決して勧めません。

 銀行によるルール違反は決して許されることではありませんが、そもそもこのような欠陥商品は、最初から禁止すれば被害者も出なかったはず。金融庁を含む監督当局がこれまで仕組み債を放置してきた「不作為」こそ、大きな問題だったのではないでしょうか。

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今月のもくじ

・中小事業者のデフォルト状況(〜2023年5月)

・気になるアイツ 〜清滝教授の一石〜

・あとがき 〜ガリガリ君とインフレの行方〜

(Photo by Emmanuel Appiah at Unsplash)