曲突徙薪(きょくとつししん)第5号
中小事業者のデフォルト状況(〜2023年4月)
東京商工リサーチ(TSR)は、5月10日に4月の倒産件数を公表しました。倒産件数は610件(前年同月比+25.5%)となりました。直近12か月の累計は7,004件となり、こちらは13か月連続の増加、コロナ禍前の年8,000件超の水準に向けて着実に戻りつつあります。倒産企業の負債総額は2,038億円で、2か月続けて1,000億円の大台を超えています。4月26日に民事再生法の適用を申請した不動産のユニゾホールディングス株式会社が、1社で負債総額1,261億円と金額を押し上げています。
多くの企業が決算期末を迎える3月の倒産件数が大きく増えていたこともあり、この4月の動向にも注目していましたが、前年同月比で25%を超える伸び率を維持しており、倒産の増加基調は依然として続いているようです。また業種別の内訳を見ると、特に建設業での倒産の増加が顕著になっています。建設業への依存度は、都市部よりも地方の方が高い傾向にあります。以前から、足元の倒産の増加は財務状態の脆弱な零細企業が中心であることを述べてきましたが、地域別でいうと、都市部よりも地方部に注意が必要かもしれません。
全国信用保証協会連合会が毎月公表している保証件数や代位弁済件数については、現時点で3月期の数字の更新がないため、今月はコメントを割愛します。
米国ではABI(American Bankruptcy Institute)が、調査会社Epiq Bankruptcy社の調査結果をもとに、4月の倒産件数を速報しています。日本の会社更生法に相当する破産法11条(Chapter11)の適用件数は277件(前年同月比+31.9%)となりました。直近12か月間の累積は4,367件で、こちらは12か月連続の増加です。米国でも倒産件数は、コロナ禍前の平均である約5,800件を大きく下回っていますが、直近では前年に比べて3割以上の高い伸びが続いています。
米国では地方銀行の経営不安が盛んに伝えられており、これが地方銀行の貸し出し姿勢の消極化につながることが懸念されています。これは地方銀行からの借り入れに資金繰りの多くを依存する中小の事業者にとっては、さらなる倒産の増加要因となりかねません。ここまでのところは、ABIの数値に目立ったトレンドの変化はありませんが、向こう数か月程度ではその影響があらわれてくる可能性にも注意したいところです。
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