曲突徙薪(きょくとつししん)第5号

2023年5月15日発行

 4年振りになんの制約もないゴールデンウィーク、天候にも恵まれて、久々に旅行を楽しめた方も多かったのではないでしょうか。私が訪れた地方の観光地も、特に日本人の観光客でごった返していましたが、その割に目立ったのが、せっかくの書き入れ時にも関わらず「閉店中」を掲げるお店です。

 実に3年にも及んだコロナ禍によって、飲食店は宿泊業界と並んで大きな打撃を受けました。長く続いた行動制限に耐えきれず、閉店を余儀なくされたお店も少なくないことでしょうが、もう一つ見逃せないのが、日本の地方において特に深刻な「人手不足」です。厚生労働省が4月28日に発表した3月の有効求人倍率は全国平均が1.32倍、都道府県別のトップは東京都の1.77倍でした。ところが、都市部ばかりが人手不足なのかというと、必ずしもそうではありません。埼玉県は全国平均を大きく下回る1.04倍、神奈川県に至っては全国ワーストの0.90倍です。これに対して、私の旅した島根県は1.61倍、鳥取県は1.51倍ですから、地方の働き手不足も相当なものです。

 求人動向は昔から景気のバロメータとして広く参照されてきましたが、リオープンに沸く東京のみならず、地方でも見られる有効求人倍率の高止まりは、人口減少と高齢化が地方経済に与えるダメージの大きさを逆にあらわしているようにも見えます。

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今月のもくじ

・中小事業者のデフォルト状況(〜2023年4月)

・気になるアイツ 〜「くん呼び」文化の将来〜

・あとがき 〜消しゴムマジック〜