曲突徙薪(きょくとつししん)第3号

 全国信用保証協会連合会は、1月末までの保証承諾や代位弁済にかかる数値を公表しています。1月の新規保証承諾金額は5,046億円(前年同月比+22.4%)となりました。昨年に比べると大きく伸びているように見えますが、2019年1月に比べると+4.2%の微増、2020年1月に比べると▲1.9%の微減ですから、新規保証の申請状況はコロナ禍以前の平時の水準に戻っています。また、保証残高件数と代位弁済件数から推定した1月の代位弁済率は0.74%となりました。こちらは17か月連続での上昇ですが、水準としてはコロナ禍前を依然として0.4~0.5%ポイントほど下回っています。

図表2 代位弁済率(推定値)と新規保証承諾金額(2018〜2023年)
(出所:全国信用保証協会連合会Webサイトより筆者作成)

 保証と代位弁済の動向については、今年の7月から来年の3月にかけて集中するゼロゼロ融資の元本返済据え置き期間満了によって、信用力の低い事業者では返済据置期間の延長(いわゆるリスケ要請)か、もしくは代位弁済が、信用力の高い事業者では利払い負担を嫌った繰り上げ返済が、それぞれ増えることが想定されます。正反対の動機ながら、いずれも保証残高の減少要因となります。前者の増加からは中小事業者全般の信用力低下が懸念されるため、金融機関にとっては信用リスクの悪化要因となります。一方、後者が大きく増える場合には、事実上の無リスクで金利1%という、地域金融機関にとって非常に高採算の貸出が剥がれ落ちることを意味し、こちらは貸出利回りの悪化要因となります。

 米国ではABI(American Bankruptcy Institute)が、調査会社Epiq Bankruptcy社の調査結果をもとに、2月の倒産件数を速報しています。日本の破産に相当する破産法11条(Chapter11)の適用件数は273件(前年同月比+82.8%)となりました。直近12か月間の平均は340件で、こちらは10か月連続の増加です。ひと目でわかるとおり米国でも、倒産件数は、いまなおコロナ禍前の平均である約480件を大きく下回っています。

図表4 米国Chapter11申請件数
(出所:American Bankruptcy Institute Webサイトより筆者作成)

 さて、今月10日に明らかになったSVB(Silicone Valley Bank)の経営破綻によって、にわかに金融危機を心配する声が広がっています。増資発表から一転して、わずか2日ほどでの急激な預金流出による破綻劇には驚かされましたが、その後の米国当局の対応は極めて迅速かつ徹底的で、預金も保険の枠を超えて全額保護されるなど、システミック・リスクにつながるような不安材料は、これまでのところしっかりと抑え込まれています。取引関係を有するスタートアップやベンチャー企業群のなかには、一部で資金繰りに支障を来すところが出るかもしれませんが、現時点で、米国全体の倒産件数に大きく影響することは想定していません。