曲突徙薪(きょくとつししん)第2号
2023年2月15日発行
藤井聡太王将に羽生善治九段が挑戦する将棋の王将戦が、異様な盛り上がりを見せています。正直に申し上げると私は当初、羽生九段が1つ勝てるかどうかという程度に思っていました。それほどまでに、今の藤井王将(竜王、叡王、王位、棋聖)の強さは圧倒的です。まさに、四半世紀前の羽生九段のように。
蓋を開けてみれば第4局終了時点で2勝2敗。若き絶対王者に挑むかつての絶対王者は、かつての絶対的な強さを取り戻したかのように、互角以上の戦いを繰り広げています。AIを活用した最先端の研究で棋界を制圧する藤井王将に対して、30歳を超える年齢差をまったく感じさせない羽生九段の最先端の戦いぶりに、ぼちぼち五十路の声が聞こえてきた私も大いに心揺さぶられます。
王将戦は泣いても笑ってもあと3局です。これから2週おきにやってくる至高の対局を楽しみに、春の訪れを待っています。
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今月のもくじ
・中小事業者のデフォルト状況(〜2023年1月)
・気になるアイツ 〜金利上昇と企業倒産の関係〜
・あとがき 〜本気のインフレ〜
中小事業者のデフォルト状況(〜2023年1月)
東京商工リサーチ(TSR)から1月の倒産件数が発表されています。1月の倒産件数は570件(前年同月比+26.1%)となりました。直近12か月の平均は546件で、こちらも緩やかながら10か月連続の増加です。ただ、コロナ禍前の平均は700件程度ですから、依然として倒産は平時よりも大きく抑止された状態が続いています。また1月の倒産企業の負債総額は565億円で、約50年ぶりの低水準となりました。1月の倒産先はすべて中小企業基本法上の中小企業とのことで、足元で少しずつ増えている倒産もほとんどが中小・零細企業のようです。後述する「コロナ借換保証」に見られる事業者破綻の先送り策もあり、倒産件数の増加は引き続き緩慢なペースに留まりそうです。足元の倒産動向は、金融機関の経営を脅かすような信用リスクの顕在化からは、ほど遠い状況と言ってよいでしょう。
全国信用保証協会連合会からは昨年12月末までの保証承諾や代位弁済にかかる数値が発表されています。12月の新規保証承諾金額は8,292億円(前年同月比+15.2%)となりました。2020年のコロナ融資の反動で大きく減っていた昨年に比べると大きく増えているように見えますが、コロナ禍直前の2019年12月の8,433億円とほぼ同水準で、新規保証のペースはおおむねコロナ禍前の状況に戻ったようです。
保証残高と代位弁済件数から推定した12月の代位弁済率は0.72%でした。1年前に比べると約0.2ポイント高い水準にあり、代弁率は着実に上昇傾向をたどっています。本来であれば、今年の7月から来年の3月にかけて集中するゼロゼロ融資の返済据置期間満了とともに、代位弁済は大きく跳ね上がることが予想されます。一方で、1月10日から新たに始まった「コロナ借換保証」は、一定の条件を満たす事業者を対象に、最長でさらに5年間、実質的な返済据置期間の延長を認める仕組みになっています。国内中小事業者におけるまとまったデフォルトの発生は、さらに先送りされる可能性が高く、引き続き代位弁済率の上昇ペースは緩慢なものとなりそうです。
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