曲突徙薪(きょくとつししん)創刊号
中小事業者のデフォルト状況(〜2022年12月)
本Webマガジンでは毎月、国内中小事業者のデフォルト状況、信用リスクの動向についてお届けしていきます。参考にしている情報は、主に以下のラインナップです。
・東京商工リサーチ(TSR)の倒産動向
・全国信用保証協会連合会の信用保証実績
・日本リスク・データ・バンク株式会社のRDB企業デフォルト率
TSRの数値は前月の倒産件数を翌月中旬に参照できるため、速報性にもっともすぐれています。また信用保証協会の保証実績は、代位弁済の状況を通じてデフォルト動向の把握が可能なほか、新規の保証実績や残高のデータから、中小事業者向け与信の動きを知ることもできます。RDBのデフォルト率は、銀行貸出先という明確なカバレッジのもとで定量化されたデータであり、また業種別、信用力別の動向を把握するための貴重な材料を提供してくれます。このほかの情報としては、3か月ごとに地方銀行協会が発表するデフォルト率の数値があります。また貸出の増減や水準を把握するために、日銀の貸出金統計も参考にしています。米国の事業者のデフォルト動向の確認には、Chapter11の申請件数を使っています。こちらは政府統計にも関わらず、翌月頭に公表される、極めて速報性の高いデータです。日本の政府も大いに見習ってほしいところです。
当面はこのあたりの情報から、最新の国内の中小事業者のデフォルト動向と今後の注目点について、毎月取りまとめてこちらでご報告していきたいと思います。以下では、本稿執筆時点(1月25日)で取得可能な情報を元にした、中小事業者のデフォルト動向を紹介します。
足元の全般的な傾向としては、コロナ禍後のボトムからの緩やかなデフォルトの増加基調が続いており、特に信用力に劣る零細事業者にてデフォルトが増えています。小口先が中心ということで、現時点で金融機関にとって信用コスト面での金額的なインパクトを大きく懸念する状況にはありませんが、金融機関は3月期末を前にして、体力のあるところを中心に今年も予防的な引き当て行動に出る可能性があります。これは、TSRが発表する倒産動向ではほとんど表に出てきませんが、信用保証協会の代位弁済率には部分的に影響する可能性があります。また、RDB企業デフォルト率においては直接的な上昇要因となりますが、これが金融機関にとって実感にもっとも近いデフォルトの数値になるものと思われます。
東京商工リサーチ(TSR)が公表した倒産動向によると、2022年12月の全国の企業倒産は606件で、前年同月比プラス102件(同+20.2%)の増加となりました。12か月移動平均は536件で、こちらは9か月連続のプラスです。倒産件数は緩やかな増加基調が続いています。
また、全国信用保証協会連合会が発表した昨年11月の代位弁済件数は2,582件で、前年同月比プラス51.3%の増加、推定代位弁済率は0.69%となりました。コロナ禍直前の代弁率が1.2%前後でしたから、ゼロゼロ融資の返済開始の本格化する前のタイミングで、なお代位弁済は低水準に抑えられています。11月の代位弁済金額は30,705百万円でしたが、これはコロナ禍前の19年11月を6%ほど上回っています。代位弁済金額がコロナ禍前の水準を上回るのは3か月連続で、件数よりも一足先に代位弁済の規模がコロナ禍前の水準を回復していることがわかります。保証協会の数値ということで小口先の特徴ではあるものの、ゼロゼロ融資をはじめとする資金繰り支援策の影響で、今後発生するデフォルトについては金額規模が水膨れしている可能性があり、小口先といえども保全状況やプロパー部分の大きさについては、あらためて点検の必要がありそうです。
日本リスク・データ・バンク株式会社(RDB)が公表する、昨年10月の企業デフォルト率は1.05%で、前月から0.01%ポイント増加のほぼ横ばいとなりました。当月の数値については、業種別、信用力区分別のいずれを見ても、目立った変化は見られません。
米国では昨年12月の倒産件数が発表されており、日本の法的破綻に相当するChapter11の申請件数は、12月単月で326件(前年同月比+3.2%)、12か月移動平均では323件(前月比変わらず)となりました。前月は暗号資産交換業者の大口破綻の影響で、件数が前年対比で大きく増えていましたが、今月は小幅の伸びにとどまりました。とはいえ、再生型の倒産を含めた倒産件数は29,631件で、前年同期よりも6%ほど増えていますから、米国も日本と同様に、緩やかな倒産の増加基調が続いています。
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